2022.10.28
靴づくり編6_グッドイヤー製法その② ラスティング
皆様、こんにちは
今回は、グッドイヤー製法のラスティング(吊り込み作業)をご紹介します。
この作業は、大まかに言うとアッパーの革をラストに合わせて引っ張り中底に固定させる工程です。
①アッパーに芯材を入れます。
先芯はつま先部分、カウンターは踵部の表革と裏革の間に糊付けして挟み込みます。
芯材の役割ですが、靴の型崩れを防ぐ事、カウンターには履いた時に足を安定させ靴との一体感を高める効果もあります。
②中底をラストに仮留めします。
③トーラスティング
中底を取り付けたラストに、アッパーを載せてトーラスターという機械でつま先部分を吊り込みします。
左上)吊り込み前 右上)吊り込み後
下の機械がトーラスターで、これはCERIM社(イタリア)のものです。
機械の構造や動きを静止画と文章で説明するのは困難なので、以下の写真で雰囲気だけつかんで頂ければと思います。
ピンサー(クリップの様な9個見えている部品)がアッパーを挟んで固定し、テーブル(中央のひし形の部分)がラストを押し上げる力でアッパーがラストにフィットする仕組みです。
左上)ピンサーに挟むところ
右上)見えませんがテーブルが上がってアッパーにテンションが掛かっています。
その後ワイパー(右下の部品)が閉じてアッパーが中底に貼り付けられる。
右上)左の写真でチラッと見えているものを取り出しました。
ワイパーが締まるところは見えません。
ピンサーが挟む、テーブルが上がる、ワイパーが締まるというのがトーラスターの動きです。
横からみるとこんな感じになります。
③ヒール、サイドラスティング
弊社では、ヒールはヒールラスターという機械で行ない、サイドは工具を使って手で吊り込みします。
下の工具をワニといいます。
革を挟み、突起部分を支点とするテコの原理で引っ張ります。また突起の部分がハンマーにもなり、叩くことで中底にアッパーを貼り付けます。
引っ張る→親指でおさえる→叩くの繰り返しで片足10回位でしょうか。
ラスティング終了
④スクイ縫い
グッドイヤー製法では、他の製法には無いスクイ縫いという工程があります。ウエルトをアッパーと中底に縫い付けるもので、この製法特有の重厚感や足なじみの良さには不可欠の工程です。
下の画像がスクイ縫い機です。
ちなみにスクイ縫いには下糸が無く一本糸、いわゆるチェーンステッチです。
こんな針です。
スクイ縫いの糸
5本撚りの糸を使っています。糸にチャン(松脂)と油分を混ぜて染み込ませることでチャンが接着剤のように縫い目を固め、多少は水の侵入を防ぐ役割も果たします。
今回は、ラスティングからスクイ縫いまでをご紹介しました。
次回その③では、シャンクや中物の装着から出し縫い(ウエルトと本底を縫い付ける)工程までを紹介します。
このシリーズはその⑤までを予定しています。